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ネタバレあり、個人メモなので人に読ませる書き方になっていません
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まあもちろん、実際に書く頃には、もっといい言い回しとか、もっとネタ整理とか、してるはずですが。
というかそうであってくれW
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 依頼人より連絡あり。
 今回の職務は暗殺。対象は――第三王子アシュクニー・トルギルスと、その従者である重装歩兵。
 そこで、ふと眉根をしかめる。依頼人が第三王子を葬りたがっているのはよく知っている。であれば、対象は王子だけで十分ではないか。その従者までわざわざ手に掛ける意味はなかろう。暗殺の時に邪魔だからついでに殺す、ということはあってもおかしくないのだが……。
 いろいろ考えてみるが、しっかりと二人分の前金が届いている事実に変わりはない。依頼人は本気で従者も殺そうとしている。
 重装歩兵の名は……ナギ・クード……?
 ああ、なるほど。合点がいった気がする。

 父と比べられるのは慣れっこだった。
 むしろ、母が自分に父の名を付けてくれたのが嬉しかった。いつかその名に恥じない人間になりたいと思っていた。その決意を挫けさせないためにも、父の名で呼ばれ、父と比べられるのは本望だった。
 だというのに。
「よう、セカンド(ザリス)」
 この人だけは――師でもある黒い聖騎士だけは、名で呼んでくれない。
 抗議を試みてみたが、
「オマエなんざ『セカンド(ザリス)』で十分だよバカタレ」
 がつ、と頭に衝撃が掛かる。拳ではない。師にしてみれば頭に手を置いただけだろう。それでも今のザリスには、全身を揺さぶるものだった。
 他の人達は大抵は普通に呼んでくれるけれど、父の名を継いだ少年にとっては、ただ一人だけにでも、『セカンド』などと呼ばれるのは、悔しかった。何度も反発し、抗議し――諦めたのは、妥協したからに過ぎなかった。
「だったら、そだな……『ジュニア(リッテン)』って呼ぶか?」
「……『セカンド(ザリス)』でいいです」
 『ジュニア』では、『シニア』に追いつける可能性は無だ。『セカンド』なら『ファースト』になれる可能性も一応はある。本当は、どちらも年齢序列を示している以上、可能性もなにもなく、少年の考え方は言葉遊びに過ぎなかったわけだが、それでも彼は『ザリス』という呼び名を許容した――少し語弊がある。呼び名を許容したとはいっても、それは呼ぶ相手が自分よりずっと実力がある師だからだ。まださほどの力量差のない幼馴染みからそう呼ばれれば、烈火の如く憤った。
 そんな軋轢――とも言えない何かはあれど、本来の居住であるエトリアよりも『故郷』と呼べるようになった、山岳の郷で、ザリスとも呼ばれるようになった少年は、幼馴染みと共に健やかに育っていった。
 そして、十五歳。成人の日を迎えた彼は、師や亡き父と同じ、聖騎士を志す。
 ただし、父の縁を辿ったエトリアでもなく、師の縁を頼った『百華騎士団』でもなく。
 近隣ではもっとも名高い『王国』の騎士団に、入隊することを望んだのだが。
 母も、『王国』のカースメーカーの里長である伯父も、少年の望みを聞いて眉根をしかめた。エトリアでいいんじゃないのか、『百華騎士団』でもいいじゃないか、いっそハイ・ラガードは、と翻意を促した。けれど彼は、いずれにも首を横に振った。
 こういう意味で父や師の影響が強い場所は、望まなかった。自分は自分のみの力で聖騎士を志したかった。正確に言えば『王国』騎士団も父のいた場所だが、当時の父は聖騎士ではなく重装歩兵にすぎなかった。だから父の影響はないだろう、と踏んだのだ。
 もっとも、彼が全く思いもしなかったことがある。
 彼が、『王国』の現王権の成立に重大な役を果たした呪術師一族『ナギ・クース』の裔でもあり、国王からそれなりに気を使われる立場であることを。
 そして、亡き父が『王国』の影の面に意外と大きな影響を与えており――そのために、自分が国家の暗部から嫌な意味で目を付けられているということを。
 前者はともかくとして、後者に気が付いたのは、ずっと後、アーモロードでの冒険が終わろうとする時のことだったが。

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