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ネタバレあり、個人メモなので人に読ませる書き方になっていません
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まあもちろん、実際に書く頃には、もっといい言い回しとか、もっとネタ整理とか、してるはずですが。
というかそうであってくれW


「あの二人が、『この世界』に引き寄せられたのはな……」
 『エーテル教授』ゼルコヴァが語り出す。白亜ノ森を駆け抜けながらである。中年を過ぎていることもあり、体力はあまりないように見えるのだが、喋りながらでさえ、息を醜く乱す気配は全くない。深都の技術によって秘めた力を引き出された時、ゼルコヴァの肉体の裡より見いだされたのは、かつて彼がそうであったという、戦いの中に生きるウォリアーの力だった。その力が、研究に身を捧げる関係で肉体的に脆弱になりがちなゾディアックである彼に、耐久力を与えているのだ。
「どうせ、『エーテルの力である』でしょ?」
 半ば茶化すように、併走するシノビの女が応えた。こちらは生まれた時から闇に生きるものとしての鍛錬を繰り返してきた者、しかもその肉体は若さに満ちあふれ、力は絶頂の時期にある。
「ふははははは、わかっているではないか」
 ゼルコヴァはハコベの言葉に是の意を返した。
「……教授、そればっかりですね……」
 少し呆れたような調子を帯びているのは、少女の声であった。ゼルコヴァにしても、ハコベにしても、息が乱れていないとはいえ、走っているのだから、声に力が入っているのは当然。しかし少女――ティラムルのそれには、力の芯が全くない。それもそのはず、ティラムルは自力では走っていず、剣虎の背に乗っているのだ。彼女は農民、獣使いの部族に生まれながらも、そこまでの力を持たなかった者。戦に慣れた者達の疾走に付いていける力はないのだ。
 ティラムルが乗る剣虎は、兄である獣使い、マシュワナイの友であった。マシュワナイ自身は、別行動をしており、この場にはいない。
「なにを!? 我がエーテル理論をバカにするでないわ!」
 ゼルコヴァは憤然たる声音を顕わにする。いつもなら、ここでふてくされた教授は自室(として使っている借り部屋)に戻り、別段『エーテル理論』に興味があるわけでもない仲間達は、彼の機嫌が直るのをのんびりと待つだけである。しかし、今ばかりは違った。ゼルコヴァはふてくされることなく、他の仲間達は、彼が語り出すのを待っている。
「――やれやれ、今回ばかりは、儂の話を聞く気になっておるか」
 ハコベとティラムル、そして、槌を持つ黒肌と赤毛のウォリアーと、涼やかな目と不機嫌そうな表情のショーグン、そして、奇妙な骨格にあどけない青髪の少女の顔を持つアンドロの気配が、自分に集中している。それを感じ、ゼルコヴァは、仕方あるまい、と言いたげに唇の端を吊り上げた。

 『あの二人』というのは、『シーリンク』のギルドメンバーである、ファランクス・ファリーツェと、プリンセス・ルーナのことである。
 彼らの来歴は実に奇妙であった。本当なら、ファリーツェは死者であり、ルーナは北の大陸で息子の帰りを待っているはずであった――彼らは、同じくギルドメンバーであるファランクス・ザリスの両親なのである。
 ザリスの年齢を考えれば、彼ら二人は――死者の方が存命だったとしても――ゼルコヴァに前後した年齢であるのが当然であった。事実、北の大陸にいるはずの母親は、それらしい年齢(やや若々しく見えるらしいが)でいる。だというのに、『シーリンク』に加わった二人は、『息子』とほとんど変わらない年齢でいたのだ(――実は、年齢問題に関しては、特にルーナの方にもっといろいろ込み入った話もあるのだが、今は主題ではないのでひとまず置いておく)。
 ゼルコヴァは、彼らの話を聞き、現状と突き合わせ、ひとつの結論に至った。
 彼らは、『今我々が生きているこの世界によく似た、別の世界』、すなわち『平行世界』(正確に言えば、その『平行世界』の、現在時刻点から見ておおよそ二十年前)からやってきたのだと。
 ゼルコヴァが研究する『エーテル理論』を持ってすれば、近い位置にある『平行世界』同士で、構成要素の行き来があるのは、おかしな話ではない。しかし、それはあくまでも理論上の問題で、実際には、『世界』の壁はそう簡単に交わらない。何か、壁を突き崩すきっかけが必要なはずなのだ。
 ――ここまでは、前々からゼルコヴァが仲間達に披露していた論である。
「儂が引っかかっていた点は、ふたつじゃ」
 『八百比丘』という謎の文字を掲げてある鳥居をいくつもくぐり抜け、空間の歪みに身体を翻弄されながらも、ゼルコヴァは、そのようなものを全く感じていないような口ぶりで、話を続ける。
「ひとつ、なぜ『彼ら』なのか。ふたつ、どのような『理由』が、『世界』の壁を交わらせるに至ったのか」
「引っかかるも何も、それが『全て』に思えるが」
 涼やかな目の青年イルスカが、不機嫌そうな口ぶりで返す。ゼルコヴァは、「やれやれ」と声をあげた。全力でではないにしろ、走りながら話している今は、肩をすくめたり首を振ったりはできない。
「疑問をひとかたまりとしてとらえておる状態と、幾つかに分類できておる状態は、大分違うわ」
「続きを、教授」
 感情のこもっていない無機質な声で、先を促すのは、機人であるシラーだった。
「よかろう――しかし、ひとまずは目的地に着いたようじゃの」
 その声を合図としたかのように、一同は足を止める。
 彼らの正面には、今までにも何度か潜ってきた、表面を蔦や白椿の木に埋め尽くされた扉ではない、白い石灰質がむき出しになった扉。最もよく開け閉めされるがために、そのような状態を維持しているのだろう。
 誰かが開けた時に、扉の上に伸びている木から落ちてきたのか、白椿の花が一輪、森の床上の水たまりを漂っていた。
「随分と遅れちゃいましたね」
「仕方あるまい。結界を抜けるのに少々の時間がかかったからの」
 本来、この森は、アーモロード王族のみが踏み込む聖域だ。王族の警備の為に同行する衛兵隊が、印である王家の紋章を授けられることで、同じく侵入を許されている。姫を守るように海都の元老院に依頼された『シーリンク』海都班も、同じように紋章を持っている。そして、姫を弑する為に深王と共に行動している『シーリンク』深都班も、また――深王が正当なるアーモロードの王であるために。
 しかし、今この場にいる『シーリンク』別働隊には、紋章はない。海都と深都どちらにも行動を秘匿する関係上、紋章を手にすることもできず、星術で無理矢理結界を打破するしかなかったのである。
「しかし、『世界樹』の邪魔が入るかと思っていたのだが……作戦が上手くいきすぎたのか、『世界樹』にとっては気にする価値もないことなのか……」
「いいじゃん、とにかくここまでは上手く来れたんだから、次に進も。あと、話の続き」
 槌を持つ少女テムシルの楽観的な言葉に、ゼルコヴァは今度こそ肩をすくめた。
「……確かに、『世界樹』の思惑なぞ考えていても仕方あるまい。行くぞよ」

 扉をこっそりと開けて、中に入り込む。
 しかし、仮に扉を星術で派手に破壊して切り込んだところで、問題はなかったかもしれない。
 実のところ、扉の前に到達した時点で全員が気が付いていたのだが――扉の向こう側は、人智を越えた戦場だったのである。激しいエネルギーのぶつかり合いの最中に、戦意のない人間が数名紛れ込んだとしても、そうそう気付かれることはなかっただろう。
 最初に目にしたのは、二体の機人であった。その身体よりも長大な刃を振るい、戦場を蹂躙し続けている。その正体は、アーモロード最後の王であった深王ザイフリートが、人類の敵と戦うために、己が身体を機人へと変貌させたものと、その側近として生み出された少女型機人オランピア。
 人を越えた強大な力。二体の力を合わせて繰り出される雷の嵐。それは、並みの人間が相対すれば、一呼吸する間もなく生命を失い、肉塊か消し炭と化すであろうものだった。しかし、二体と相対している五人の冒険者は、膝を屈することなく立っている。否、正確には、時にはくずおれ、消えそうな生命の火を大事に抱えながらも地に伏し、うずくまる者もいた。だが、その者の傍には黒髪の少女が駆け寄り、掌を倒れた者に当てて、『気』を注入するのだ。
「ねえちん……」
 テムシルが、黒髪の少女――姉であるモンク・ヒュリネの呼び名をつぶやいた。その声が、ひゅう、と変な音を立てたのは、異形と化した深王が、巨大な刃である右腕を、姉めがけて振り上げるのを目撃したからだ。
 しかし、テムシルの想像した惨劇は起きなかった。黄銅色の鎧に身を包んだ青年が間に割って入り、その盾をもって、人を簡単に両断しそうな攻撃を受けきったからだった。
「……行きましょう、テムシル。彼らを信じてください」
「……うん」
 シラーに促され、テムシルは後ろ髪を引かれるような顔で、姉達の戦いの様を見つめたが、すぐに目を反らし、ゼルコヴァ達の後を追った。
 生け垣の合間に隠れるように進むこと数分。先の戦場の気配が薄れてきたと思った頃合いで、別の戦場が姿を現した。
 その戦場を支配しているのは、半人半虫というべき奇妙な生命体だった。美しさと儚さとおぞましさが均等に宿ったその姿は、気の触れた芸術家が絵や彫刻に残しそうな姿をしている。辛うじて残った人間の姿は、幼さを残した、透き通るように白い肌と白い髪の少女の姿をしていた。少女は半ば気の触れたような表情を浮かべ、笑い叫びながら、その場を覆い尽くす吹雪を、天地を結び吼える雷を、自在に操っている。
「私と兄様の再会を邪魔した……クジュラすら手に掛けた……あなた達など、消えてなくなってしまえ……!」
 こちらも、並みの人間が相対峙したら、またたく間すら与えられずに氷塊と化し、あるいは雷光に呑まれただろう。しかし、この恐るべき魔と向き合う五人の冒険者も、時に膝を折りながらも毅然として戦場にある。
「……めげるんじゃないわよ、あなた達! この私の前で無様な真似など許さないわよ!」
 中央に立つ、白いドレスを着た緑髪の少女が、鼓舞するように声を張り上げる。彼女のような貴人の命令には、周囲の者の力を引き上げる力があるのだ。もちろん、それだけで立ち続けていられるような甘い戦場ではないが、少女には先のモンクのような『気』を操って怪我を治す心得があり、本職には及ばないながらも、その力で仲間を救っている。
「やれやれ、ルーナは元気じゃの」
 ゼルコヴァは苦笑い――その実、安堵を多分に含んだ笑み――を浮かべ、自分に従う仲間達を、さらに先へと促した。
 戦場の範囲から辛うじて外れたところで、傷だらけの若きショーグンと、それを介抱しながらも戦場を見守り、涙を浮かべる老婆の姿を、『シーリンク』は見た。イルスカが何かを叫びそうに口を開けたが、倒れたショーグンの胸が上下していることを確認すると、激情を抑え、仲間達の後に続くのだった。

「で、さっきの話の続きじゃがの」
 一本の大木を見つけたところで、ゼルコヴァは足を止めた。シラーに視線を向け、頷くと、機人の少女も頷き返し、なにか荷物らしきものを背負い、器用に樹を登っていく。それで一段落付いたようで、ゼルコヴァは安堵の息を吐くと、話を続けた。
「……『平行世界』は無数にある。ザリスの父が死ななかった世界。儂が傭兵をやめなかった世界。お前達がアーモロードに来なかった世界。……ひょっとしたら、先程ヒュリネが深王に真っ二つにされて死んだ世界、というのも生まれたかもしれんの」
 テムシルがぎょっとしてゼルコヴァを見たが、口を開くことはなかった。
「まあそんなわけでじゃ、そういった世界の中には、『シーリンク』が海都だけに肩入れした世界や、逆に深都にだけ味方した世界、というのもあるはずじゃ。そして、細かい差異はあれど、『シーリンク』が深王を倒した世界、逆に姫を掣肘した世界も、無数にある。――『シーリンク』が全滅した世界も、のう。そして、そんな世界で、こう思った『シーリンク』も数多かったはずじゃ」
 固唾を呑んで続きを待つ一同に、ゾディアックの男は、僅かに間を置いて、言葉を続けた。

 ――結局、我々は何のために戦っていたのだ。真実はいずこや? とな。

「真実を知りたい――それが、エーテルを動かし、『世界』の壁を打ち壊して交わらせた、原因じゃ。ひとりひとりの動かしたエーテルは微少じゃが、それが数多集まれば、このような事象も起こせるのじゃ。とはいえ――それだけでは、ほんの少し、『世界』の壁が交わる程度。本来は強固に分かたれている『平行世界』は、すぐに元に戻り、何事もなかったようにそれぞれの時空間を伸ばし続けたじゃろうな。しかし、だ。ここで偶然が起きた」

 数多の『世界』の同一存在達が動かしたエーテルが、ある『世界』と、それに近い別の『世界』を、僅かに接触させた。
 その『世界』が再び離れるまでの刹那に、片方の世界で『事故』が起きた。
 ある迷宮を探索していた二人の冒険者が起動させた『アリアドネの糸』が、空間跳躍事故を起こしたのだ。
 普通なら、冒険者達は、自分達がいる『世界』のどこかに飛ばされるだけだっただろう。たとえ、ふたつの『世界』が接触しあっていたとしてもだ。なぜなら、それぞれの世界には同じ存在がいる。普通であれば、その存在同士が反発し、同じ世界に同じ存在が揃うことを防ぐ。
 しかし、ひとつだけ違うことがあった。
 冒険者のひとり――ファリーツェは、交わった別の『世界』では死んでいた、つまり、すでに『存在』しなかったのである。

「それでも微少な可能性だっただろうがの、存在同士の反発がなかったために、『糸』の事故による移動先に『平行世界』の可能性ができ、あまつさえ、それが選択されてしまった。ルーナは……同じ存在が『こっちの世界』にもいたが、ファリーツェに引きずられたような形になったわけだろうよの。こうして、あの二人は、『この世界』にやってきて――海都と深都、どちらに付くか悩む『シーリンク』に『じゃあ、両方に味方して、それぞれの真実を見てみたらいいじゃないか』とのたまったよの?」
 仲間達は呆然と、エーテル教授の仮説を聞いていた。
 極小の可能性が連なってできた、馬鹿のように奇跡的な話ではないか。しかも、それが本当であるかどうかの証拠もない。証拠もないが――現に自分達『シーリンク』は、今ここにこうして、海都と深都双方に味方し、あまつさえ『真実』の一端を引き当てた。
 だが、ゼルコヴァの話は、エーテル理論というよりも、まるで……。
 どのように自分達の困惑を表現したらいいのか、もどかしく思う仲間達に対して、ゼルコヴァは、にやりと笑みを見せた。
「知らなんだか? このようなエーテルの働きを、凡人どもは――『切なる願い』と呼ぶのじゃぞ?」

 大木を登ったシラーが垂らした縄梯子――それが先程の荷物の正体だ――を伝い、冒険者達は樹の上に到達する。
 そこは、二つの戦場を同時に見渡せる場所だった。
 どちらの戦場も、未だ収束の気配を見せていない。それは、ある意味では歓迎するべき状況であった。
 なぜなら、深王や姫を相手取る『シーリンク』達は、相手を倒すために戦っていたわけではないからである。
 海都と深都、双方に付いた冒険者達が、未だに王族達に付き従い、血生臭い戦いに荷担しているのは、ひょっとしたら彼らの戦いを監視しているかもしれない『世界樹』の意識をそちらに逸らすためだった。
 これからゼルコヴァ達が手がけるのは、『世界樹』の怨敵の眷属である『フカビト』から授かった手段。それをよしとせずに妨害を仕掛けてくる可能性を考えていたのだ。結局、『世界樹』は眼下の戦いを監視しているのか、何も気にも留めていないのか、さっぱりわからないが……。
 ゼルコヴァが荷袋から取り出したのは、黄金色の碗。その中には、白く輝く謎の物体が盛ってある。ワイングラスをゆっくり回すように、ゼルコヴァは碗を回し、中身の白い輝きを堪能しつつ、呆れ声でつぶやいた。
「浅はかな姫と、視野狭窄な王か……そんな連中にはクリームパイのひとつでもぶつけてからかってやるのが定番じゃが……」
 くっくっと笑い声が続く。
「ま、儂らも、連中を笑えるほど偉いわけでもないしの。それに、せっかくの『可能性』が連なって生まれたこの結末、かように阿呆な締めで終わらせるのもつまらぬ」
 その手が閃き、碗を振る。
「ここは、伝説に習うかの。――行け、『白亜の供物』よ!」
 碗から飛び出した、白く輝く雪のようなもの――『白亜の供物』は、眼下の戦場めがけて降り注ぐ。
 アーモロードが生まれる前、まだ世界樹もなかった頃、突然、星海の彼方から降ってきた、癒しの雪と同様に。

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まぁ実は「このようなエーテルの働きを~」の下りを書きたかっただけかもしれんW

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