[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
冷静に考えると物凄く矛盾したタイトルですが、まあいいでしょう、嘘じゃないし。
二周目を順当に進め、深都に参りました。
『深都編に向けて』とか書いてますが、深都組に入っているとは限りません。ショーグンとか特にw
何が深王をここまで変えてしまったのだろう、とヒュリネは思った。
憎悪? 失望? ……いや。
義務感だ。深王が自らの肉体を機械化し、自分達に底なしの殺意を向けてくるのは、ひとえに。
――故郷である海都を、忌まわしきフカビトから取り戻す。
それが、深王の存在意義であり、積年の悲願であり、世界樹の命だ。
おそらく、姫が言う通りに、彼が世界樹に魅入られていなかったとしても、今ここにある状況は、ほとんど変わっていなかったのではないか。
つまり、実は深王は『変わった』のではない。ひたむきに『変わらなかった』のだ。
その信念を前にすると、深王の方が正しかったのではないかという気がする。
『シーリンク』全員が深都に味方して、深王と共に戦うべきだったのかもしれない、という気がする。
――否!
ヒュリネは己を叱咤する。それでは、片方からしか見られない現実を、もう片方からしか見られないようになるだけだ。
だから、『シーリンク』をまっぷたつに割って、両方から真実を見定めようとしたのではないか。
「大丈夫だ、ヒュウ」
前に立つザリスがささやいた。ほぼ同時期にハイ・ラガードで生を受け、共に育った幼馴染みは、今は、仲間をあまねく守る盾として、戦場に立っていた。それは肉体的にだけではない、たぶん、精神的にも。
「父さんが言ったんだ。責務を相手にひとりで責務で立ち向かったら折れるだけだって」
……いつ言ったのだろう? そう思ったヒュリネは、だが考え直す。
兄弟のようによく似た父子、その考えは、よく似ているのだろう。深王の命を受けて姫を追っていった、自分達の片割れ――彼我がすれ違った一瞬で、父子は視線を交わし合い、悟ったに違いない。
相手がこう考えているだろう、と感じたものは、彼らの場合、九分九厘外さない。
この土壇場で、残り一厘のハズレを引いていないよう、願うばかりだ。
「おれ達は、ひとりじゃないんだ」
ザリスは槍と盾を構え、深王を睨め付けながら声を張り上げた。
「海都や姫を守るとかなんとかいう大きな責務じゃなくて、おれ達はおれ達自身とちょっとまわりを守る為に戦えばいい!」
「……そっか、わたしたちは……」
『シーリンク』はひとつではなく、そしてひとつだ。その輪が砕けても、見えない何かで必ず繋がっている。
自分達が深王を止め、片割れが姫の真実を見定める。
そうすることが、結果的に海都だの人類だのを守ることになろうがなるまいが、今は関係ない。
自分達が見定めたい『真実』は――自分達が納得できるだけの何かだ。
「了解! 治療は任せなさいよ。とにかくここを乗り切るからね!」
インヴィクタが分身を行うために口訣を唱え、アシュクニーが槍を薙ぐ。そしてラバンが黄道儀を起動させるのを見定めると、ヒュリネは前を向き、深王の怒りに燃える瞳を睨み付けた――。
[そういや、ゾディのメカって何て名前なんでしょうね。ケミのアレは『アタノール』でしたが]
長かったなー。